※本記事の税制・控除に関する記載は、国税庁などの公表資料に沿った一般的な制度紹介です。税額の計算・特例が使えるかの判断・申告は税理士が行います(私は税理士ではありません)。個別のことは税理士または税務署(国税庁の電話相談もあります)にお問い合わせください。また、賃貸運用に関する記載は一般的な情報提供であり、投資助言・運用判断のアドバイスではありません。

受け継いだ部屋に入居者さんがいます。住んでいる方がいるまま、売れるものなのでしょうか?
親から受け継いだ部屋や貸家に入居者がいると、先に出ていってもらうのかと心配になるものです。けれども、入居者がいるまま次の貸主へ引き継いで売る形(オーナーチェンジ)があります。そこで私は、売り方を決める前に、契約の形と手元に残る家賃をひとつの表に整理する順番をおすすめしています。
- 入居者がいるまま売るときの、契約と敷金の行き先
- 売り出す前にそろえる書類と、買主が見るところ
- 入居者付きで売るか、退去を待つかの分かれ道
- 買主から見た利回りと、親のワンルームを受け継いだときの順番
- 税金について、税理士に確かめたいこと


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賃貸中の部屋や貸家は、入居者がいるまま売れる?



入居者に出ていってもらわないと、買う人は見つからないのでしょうか?
入居者がいるまま売ることを、東京都の案内は「オーナーチェンジ」という言い方で紹介しています。買主は部屋や家と一緒に貸主の立場を受け継ぎ、入居者はそのまま住み続ける形です。つまり、変わるのは貸主で、入居者の暮らしは続きます。
東京都の消費生活相談の案内でも、貸主が交代しても、今までと同じ家賃や条件で借りることができます、と説明されています。ですから、売主と買主のあいだで入居者の家賃や条件を決め直す話にはなりません。
敷金も同じように考えます。国土交通省の Q&Aでは、そのアパートを新しい大家さんが前の大家さんから購入していた場合は、敷金は新しい大家さんから返してもらいます、と案内しています。
東京都の消費生活相談の案内にも、「敷金も新しい貸主に引き継がれます」とあります。したがって売主の側では、まず預かっている額を確かめます。入居者への返金ではなく、次の貸主への引き継ぎとして考えます。
ただし、売主と買主のあいだで敷金の額をいつどう渡すかまでは、これらの案内に書かれていません。ですから、売買の条件として買主と話し合っておきたいところです。
なお、マンションの部屋でも戸建ての貸家でも、貸主の立場を引き継ぐという考え方は同じです。
ここがポイント
- 入居者がいるまま、貸主の立場ごと買主へ引き継ぐ形がある
- 敷金は新しい貸主に引き継がれるので、預かっている額を確かめておく
相続した賃貸物件は、売り出す前に何をそろえる?



名義はまだ親のままで、家賃の入金先もそのままです。何から手をつければいいでしょうか?
まず名義の書き換え(相続登記)です。法務省の案内では、相続人は、不動産(土地・建物)を相続で取得したことを知った日から3年以内に、相続登記をすることが法律上の義務になりました、とされています。
次に、家賃の受け取り先を確かめます。賃貸中の物件は、相続のあとも毎月の家賃が動くためです。そこで、誰の口座に入っているか、きょうだいで受け継ぐなら誰が受け取ってどう分けるかを話し合っておきたいところです。
そのうえで、買主が確かめたいことから逆に、書類を表にまとめます。
| 確かめること | 見る書類・聞く先 | 買主が見るところ |
|---|---|---|
| 名義 | 登記事項証明書 | 売主と登記の名前がそろっているか |
| 家賃の受け取り | 通帳、管理会社の送金明細 | 約束どおりに入金されているか |
| 契約の形 | 賃貸借契約書 | 更新のある契約か、定期建物賃貸借か |
| 敷金 | 賃貸借契約書、管理会社の記録 | いくら預かっているか |
| 滞納と修繕の申し出 | 管理会社の報告、入居者とのやり取り | 引き継いだあとに困りごとが残らないか |
| 管理費と修繕積立金(部屋のとき) | 管理組合や管理会社の書類 | 毎月いくらか、滞納はないか |
| 固定資産税 | 納税通知書 | 手元に残る家賃をどう見積もるか |
| サブリース契約 | サブリースの契約書 | 入居者の貸主は誰か、解約の定めはどうか |
なかでも部屋の場合は、滞納の有無を確かめておきたいところです。国土交通省のチェックシートは、買う人に向けて、購入予定の専有部分について、前の区分所有者が管理費・修繕積立金を滞納している場合、その滞納額を継承する契約になっているか確認しましょう、と案内しています。
また、大阪市内の物件について、固定資産税の問い合わせにつきましては、資産のある区を担当する市税事務所(固定資産税(土地・家屋)担当)にお願いします、と大阪市が案内しています。
ここがポイント
- 名義と家賃の受け取り先を、先に整える
- 書類は、表の項目に沿ってそろえる
入居者付きで売るか、退去を待つかは、どこで分かれる?



売るなら退去してもらうのが先、と決める前に、まず契約の形を見てみませんか。
この順番にするのは、入居者がいるまま買った人は新しい貸主になるからです。その人が自分で住みたいと考えても、次の表のとおり、契約の形によって入れ替わりの段取りが変わります。
| 契約の形 | 契約の終わり方 | 売るときに考えること |
|---|---|---|
| 普通建物賃貸借(更新のある契約) | 立ち退きを求める場合には、貸主には「正当事由」が必要です | 退去を前提にせず、入居者がいるまま売る形から考える |
| 定期建物賃貸借 | 契約で定めた期間が満了することにより、更新されることなく、確定的に賃貸借契約が終了する制度です | 満了の時期を確かめて、待つか、入居者がいるまま売るかを比べる |
| サブリース(一括借り上げ) | 借地借家法の規定により、オーナーからの解約には正当事由が必要です | 解約の定めを確かめて、買主がそのまま引き継ぐ形かを考える |
更新のある契約で、貸主の側から更新を断るときの段取りも決まっています。東京都の案内では、貸主は、契約期間が満了するときに、契約を続行しないで更新拒絶をする場合は、契約期間満了時の1年から6か月前までに借主に通知しなければなりません、とされています。
定期建物賃貸借でも、満了の時期を待つだけでは足りません。国土交通省の Q&Aでは、賃貸人は賃借人に対し、期間の満了により定期建物賃貸借が終了することを通知する義務があります、と説明しています。
さらに、賃貸人及び賃借人の双方で合意すれば、改めて再契約をし、引き続きその借家への居住を続けることができます。つまり、満了の日は、空く日とは限りません。
サブリースは、国土交通省の案内によると、賃貸経営の専門家であるサブリース会社・管理会社が、マスターリース契約を結びオーナーの物件を借り上げ、借り上げた物件を入居者に転貸することを言います。この場合、入居者の貸主はサブリース会社なので、確かめる契約書がひとつ増えます。
どちらが合うかは、契約の残りの期間やご家族の予定で変わります。そこで、空くのを待つなら、そのあいだに手元のお金がどう動くかも並べて考えます。退去をお願いする前に、次の点には気をつけたいところです。
- 退去の日を買主に約束する前に、正当事由と更新拒絶の通知の時期を確かめる
- 退去を待つあいだも、東京都の案内のとおり、物件を所有することで、固定資産税・都市計画税などの税金の支払いがあります
ここがポイント
- 更新のある契約は、退去を前提にしない
- 定期建物賃貸借は、満了の時期と再契約の有無を見る
- サブリースは、もうひとつの契約書を先に読む
買主は利回りをどう見る?売る側は何を書き出す?



利回りという言葉は聞きますが、売る側は何を見ておけばいいのでしょうか?
まず、利回りには呼び方の違いがあります。東京都の注意喚起は、不動産取引の勧誘の例として、「購入した場合の家賃収入に関して、表面利回りを強調して、実質利回りの説明を十分にしない。」という形を挙げています。ですから、資料に利回りが書かれていたら、表面利回りか実質利回りかを確かめておきたいところです。
そのうえで売る側は、買う人が考える材料として、「いくらで売りたいか」より先に「手元にいくら残る家賃か」を書き出しておきたいところです。
費用のうち、部屋ならではのものが共用部分にかかるお金です。東京都の案内では、区分所有マンションであれば、管理組合への管理費・修繕積立金の支払いがあります、と説明しています。
もうひとつ、同じ案内が買う人に注意を促しているのが、借り手がつくかどうかです。なかなか借り手がつかず、いつまでも空き家のままでは、見込んでいた収益が得られません、としています。
そこで、書き出しておきたいのは次の点です。
- 年間の家賃と、その根拠になる賃貸借契約書(複数の部屋を貸しているなら、部屋ごとの家賃の一覧)
- 管理費、修繕積立金、固定資産税、管理の手数料
- 入居者がいつから住んでいるか、家賃の滞納がないか
- 近くの似た部屋と比べて、今の家賃がどのあたりか
ここがポイント
- 資料の利回りは、表面利回りか実質利回りかを確かめる
- 手取りの家賃を先に書き出してから、価格の話に入る
相続した実家は、片付け・登記・兄弟との話し合い・売るか持つかの判断が重なって、なかなか動き出せないものです。LINEで「実家」とひとこと送っていただければ、相続した家の段取りチェックリスト(期限と相談先をまとめた1枚)をお送りします。
- ✅ 今やること/まだやらなくていいことを、状況に合わせて整理します
- ✅ 売る・貸す・持ち続けるの、それぞれの手元に残るお金の目安を一緒に出します
- ✅ 税金・登記・相続人どうしの話し合いは、それぞれの専門家(税理士・司法書士・弁護士)の役割です。必要なときは、相談先の探し方もお伝えします
まずは整理だけ。ご依頼はそのあとで大丈夫です。返信は原則24時間以内、私(岡本)からお送りします。
入居者付きで売る流れは?契約から引き渡し、入居者への連絡まで



入居者さんには、いつ伝えればいいのでしょうか?
入居者の承諾については、東京都の案内が、オーナーチェンジを行うために、借主の承諾を得る必要はないですが、投資用不動産の売買により、所有権が売主から買主に移転することに伴い、賃貸借契約の貸主の地位・権利義務関係もそのまま承継されます、と説明しています。そのうえで、売り出しから入居者への連絡までを、私は次の順で考えています。
- 書類をそろえて、手取りの家賃を整理する
- 価格の考え方を決めて、売り出す
- 買主に、賃貸借契約書や家賃の資料で説明する
- 売買契約の前に、敷金の額、貸主が変わる前後の家賃、管理の引き継ぎの扱いを買主と話し合う
- 東京都の手引きのとおり、売主は売買代金受領と引換えに、買主へ物件を引き渡し、買主のために所有権移転登記の申請手続を行う
- 入居者へ、貸主が変わることを知らせる(管理会社がいるときは管理会社にも。家賃の振込先が変わる場合は、その案内も)
このうち入居者への連絡は、借主の承諾を得る必要がないので、私は売買の話が固まってから伝える順番で考えています。ただし、いつ伝えるかまでは東京都の案内に書かれていません。ですから、伝える時期と誰の名前で出すかは、買主とも話し合っておきたいところです。
また、振込先が変わる場合は、毎月のことなので、いつの家賃から変わるのかまで書いておきたいところです。
税金で、売る前に確かめておきたいことは?



貸している部屋を売るとき、税金では何を確かめればいいのでしょうか?
受け継いだ家を売るときの税の制度に、「被相続人の居住用財産(空き家)に係る譲渡所得の特別控除の特例」があります。この特例の対象となる家屋は、相続の開始の直前において被相続人の居住の用に供されていた家屋で、いくつかの要件すべてに当てはまるものです。
また、家屋を売るか、家屋とともに敷地等を売る場合の要件のひとつに、家屋や敷地等が、相続の時から譲渡の時まで事業の用、貸付けの用または居住の用に供されていたことがないこと、があります。ほかにも、昭和56年5月31日以前に建築されたこと、区分所有建物登記がされている建物でないこと、売る時期などの要件があります。取り壊して売る場合は、別の要件もあります。
もうひとつ、「相続財産を譲渡した場合の取得費の特例」という制度もあります。こちらの要件のひとつは、その財産を取得した人に相続税が課税されていることです。
取得費の特例にも、ほかの要件があります。全体は国税庁の案内(空き家の特例・取得費の特例)で確かめてください。当てはまるかどうかの判断は税理士が行うので、次の問いをそのまま聞いてみてください。
税理士に確かめたいこと
- 受け継いだ部屋や貸家は、被相続人の居住用財産(空き家)に係る譲渡所得の特別控除の特例の要件に当てはまりますか
- 相続財産を譲渡した場合の取得費の特例の要件に当てはまりますか
- 相続のあとから売るまでの家賃は、相続人のどなたの収入として申告しますか
- 退去をお願いして立退料を支払う場合、譲渡費用として考えますか
プロとしての判断|親の投資用ワンルームを受け継いだら、どの順に考える?



ワンルームは、売るか持つかを決める前に、今の状態を見える形にしたいと私は考えています。
たとえば、遠方に住むきょうだいで、親が持っていた投資用ワンルームを受け継いだ場合を考えてみます。部屋を見たことがなく、管理も家賃の受け取りも会社に任せたままで、手元には契約書の束だけがある、という状況です。そこで私は、次の順番をおすすめしています。
- 管理の形を確かめる(管理会社に任せているのか、サブリースなのか。誰から、いくら入金されているのか)
- 毎月のお金を書き出す(家賃、管理費、修繕積立金、管理の手数料、ローンの返済)
- ローンが残っているかを、金融機関に確かめる
- きょうだいで、持ち続けるか売るかを話す
このうちローンについては、抵当権がついているとき、東京都の手引きでは、売主はその責任と負担において、その抵当権等を除去し、その登記を抹消して買主に引き渡し、移転登記しなければならないとされています。ですから、ローンの残りの額を、持ち続けた場合の毎月のお金と並べて考えます。
そのうえで、分かれ道は次のように考えています。部屋を見たことがなくても、書類から考え始めてかまいません。
- 毎月のお金が家賃でまかなえていて、家族も持ち続けたいなら、急いで売らないという答えもあります
- 家賃でまかなえず、手元のお金で補っているなら、書類の表を埋めて売る準備を始めます
- サブリースなら、売る話の前に解約の定めを読みます
ここがポイント
- 売るか持つかは、毎月のお金を書き出してから話す
- ローンが残っていれば、抵当権の扱いも確かめる
まとめ



売り方に迷ったら、賃貸借契約書を手元に置くところから始めてみませんか。
- 入居者がいるままでも、貸主の立場を引き継いで売る形があります
- 入居者付きか退去後かは、契約の形から考えます
- 価格の話の前に、手元に残る家賃を書き出します
次は、賃貸借契約書と登記事項証明書をそろえて、売り出す前の表の空欄を上から順に埋めてみてください。
相続した実家は、片付け・登記・兄弟との話し合い・売るか持つかの判断が重なって、なかなか動き出せないものです。LINEで「実家」とひとこと送っていただければ、相続した家の段取りチェックリスト(期限と相談先をまとめた1枚)をお送りします。
- ✅ 今やること/まだやらなくていいことを、状況に合わせて整理します
- ✅ 売る・貸す・持ち続けるの、それぞれの手元に残るお金の目安を一緒に出します
- ✅ 税金・登記・相続人どうしの話し合いは、それぞれの専門家(税理士・司法書士・弁護士)の役割です。必要なときは、相談先の探し方もお伝えします
まずは整理だけ。ご依頼はそのあとで大丈夫です。返信は原則24時間以内、私(岡本)からお送りします。
※本記事は執筆時点の公開情報をもとにした一般的な解説です。制度や金額は変わることがあるので、最新の内容は各確認先でご確認ください。
【参考情報】
| 機関名 | 内容 |
|---|---|
| www.shouhiseikatu.metro.tokyo.lg.jp | 貸主が交代したが、アパートを立ち退かなくてはならないのか。 |
| 国土交通省 | 「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」(再改訂版)のQ&A |
| 法務省 | 相続登記の申請義務化に関するQ&A |
| 国土交通省 | 定期建物賃貸借 Q&A |
| 国土交通省 | 適正化のための措置 |
| 国税庁 | 国税庁の公式ページ |
| www.juutakuseisaku.metro.tokyo.lg.jp | 投資用不動産を買う前に |
| www.juutakuseisaku.metro.tokyo.lg.jp | 緊急告知 ~悪質な不動産取引の勧誘にご注意を~ |
| 国土交通省(マンション管理・再生ポータル) | これだけは知っておきたい!マンションの管理状況チェックシート |
| 大阪市 | 大阪市の公式ページ |
| 国税庁 | 国税庁の公式ページ |
| 国税庁 | 国税庁の公式ページ |
| www.juutakuseisaku.metro.tokyo.lg.jp | 残金支払(決済)と引渡し |










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