※本記事の成年後見・任意後見・信託に関する記載は、法務省・裁判所などの公表資料に沿った一般的な制度紹介です。個別の手続きや制度の選び方については、家庭裁判所・公証役場・専門家にお問い合わせください。

「親の物忘れが増えてきて、実家のことが気になっています…」



「認知症になると家が売れなくなると聞きましたが、本当でしょうか?」
親御さんの物忘れが増えてくると、実家のこれからが気になり始める方もいらっしゃると思います。この記事は、そうした方に向けて、親御さんがお元気なうちに家族で話しておきたいことを順番に整理したものです。
先にお伝えすると、実家の行き先を今すぐ決める必要はありません。大切なのは、親御さんご本人の希望を聞き、判断が難しくなったときに誰が何をするかを話しておくことです。
厚生労働省の資料では、2025年の認知症の高齢者数は471.6万人と推計されています。決して珍しいことではありませんから、私は、何かあってからではなく、話せるうちに話しておくことをおすすめしています。
親御さんの判断が難しくなってからでは、売るにも貸すにも手続きと時間がかかります。話せるうちに話しておくと、あとの選択肢が広がります。
- 親が認知症になると、実家の売却が難しくなる理由
- 判断が難しくなったあとに売るときの手続きと、2026年の法改正
- お元気なうちに使える3つの備えの違い
- 実家のことで家族が決めておく5つと、親への切り出し方


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親が認知症になると、実家の売却はなぜ難しくなる?
実家の名義が親御さんのままなら、売買契約を結ぶのは親御さん本人です。お子さんであっても、代理する権限を持っていなければ、親御さんに代わって売ることはできません。
民法の第3条の2には、「法律行為の当事者が意思表示をした時に意思能力を有しなかったときは、その法律行為は、無効とする」と定められています。つまり、意思能力がない状態で結んだ売買契約は、無効になります。
ただし、売れるかどうかは診断名だけで決まるものではなく、そのときのご本人の状態によります。実際の売買では、不動産会社や登記を担当する司法書士が、売主ご本人の意思を確かめるのが通常です。契約の時は問題がなくても、引き渡しの時に確かめられなければ、手続きが止まることがあります。ですから、売れる前提で動くのではなく、気になった段階で話しておくことをおすすめします。



「診断を受けたら、もう売れないのでしょうか?」



診断名だけでは決まりません。とはいえ、状態は変わっていくものですので、お元気なうちに希望を聞いておくと安心です。
ここがポイント
- 実家が親御さんの名義なら、売主は親御さん本人
- 意思能力がない状態で結んだ契約は無効になる
- 売れるかどうかは診断名だけでは決まらないが、売れる前提で動かない
判断が難しくなったあとに売るには、どんな手続きになる?
法務省の案内によると、法定後見制度は、本人の判断能力が不十分になった後に、家庭裁判所によって選任された成年後見人等が本人を法律的に支援する制度です。申立てから開始までは、多くの場合4か月以内とされています。
最高裁判所の統計(2025年)では、申立ての主な動機(複数の動機を数えた集計)のうち「不動産の処分」が15,502件、36.3%を占めています。不動産の処分は、申立ての動機として少なくないことが分かります。
不動産の側から見て、次の4つは先に知っておいていただきたい点です。
- ご家族が選ばれるとは限りません。法務省の案内では、親族以外の専門家などが選ばれる場合があり、希望どおりの人が選任されるとは限らないとされています。先ほどの統計でも、親族以外が選ばれたものが約83.6%です
- 成年後見人等が居住用の実家を売るには、家庭裁判所の許可が要ります。裁判所の案内では、成年後見人等が本人の居住用不動産を処分するには家庭裁判所の許可が必要で、許可を得ない処分は無効とされています。入所前に住んでいた家や、将来住む可能性のある家は、今は住んでいなくても含まれます
- 費用がかかり続けます。報酬の基準は法律で決まっておらず、裁判官が決めます。公開されている例として、長野家庭裁判所の資料では、通常の事務で月額1万円〜2万円程度と決定されることが多いとされ、管理する財産が多いとさらに高くなることもあります。報酬は本人の財産から支払われます
- 今の制度では、途中でやめることが難しくなっています。法務省の案内では、本人の判断能力が回復したと認められる場合でない限り、制度の利用を途中でやめることはできないとされています
この「処分」には、売却のほか、賃貸借契約の締結・解除や建物の取り壊しなども含まれます。
2026年6月に、成年後見の改正法が成立しました(施行はこれから)
法務省の案内によると、2026年6月17日に「民法等の一部を改正する法律」が成立し、同月24日に公布されました。後見と保佐の制度を廃止して補助の制度に一元化し、本人にとって必要な範囲で利用できるようにする内容です。
法務省の概要資料では、利用の必要がなくなったときに制度の利用を終了できるようにすることも示されています。成年後見制度の見直しの施行は、公布の日から2年6か月を超えない範囲で政令で定める日です。



制度が見直されても、親御さんのご希望を聞いておく大切さは変わりません。
ここがポイント
- 判断が難しくなったあとの売却は、家庭裁判所が関わり、費用もかかる
- 成年後見人等が居住用の実家を売るには、家庭裁判所の許可が要る
- 法改正の施行までは今の制度が使われる
親御さんがお元気なうちに使える備えは?
| 備え | どんなものか | 実家の面で知っておきたいこと |
|---|---|---|
| ご本人が判断できるうちに売る | 親御さんご本人が売主になって売る | 住み続けたい場合には使えません。売った後の住まいとセットで考えます |
| 任意後見契約 | 本人が十分な判断能力を有する時に、任意後見人となる方と委任する事務の内容を、公正証書による契約で定めておく | 効力が生じるのは、家庭裁判所が任意後見監督人を選任した時からです。実家のことをどこまで任せるかが、話し合いの中心になります |
| 信託(家族信託と呼ばれることがあります) | 財産を託して管理してもらう仕組みで、契約で決める形が一般的です | 契約の組み立ては、専門家の領域です。実家を対象に含めるかどうかを家族で話しておきます |
法務省の案内によると、任意後見契約の公正証書の作成には、基本手数料13,000円、登記嘱託手数料1,600円、登記所に納付する印紙代2,600円のほか、証書代などがかかります。また、任意後見監督人には、第三者の専門職などが選ばれることが多いとされています。
どの備えが合うかは、ご家庭ごとに違います。制度の選び方は専門家の領域ですので、この記事では決めません。ただ、不動産の側からお伝えしたいのは、どの備えも契約や売買を結ぶ必要があるため、原則としてご本人に判断できる力があるうちに進める形になるということです。



「まだ元気なのに、こんな話をしてもいいのでしょうか?」



お元気なうちだからこそ、ご本人の言葉で希望を聞いておけます。
ここがポイント
- 備えは「本人が売る」「任意後見」「信託」の3つに分けて考える
- 任意後見は、家庭裁判所が任意後見監督人を選任した時から効力が生じる
- 合う備えはご家庭ごとに違う
相続した実家は、片付け・登記・兄弟との話し合い・売るか持つかの判断が重なって、なかなか動き出せないものです。LINEで「実家」とひとこと送っていただければ、相続した家の段取りチェックリスト(期限と相談先をまとめた1枚)をお送りします。
- ✅ 今やること/まだやらなくていいことを、状況に合わせて整理します
- ✅ 売る・貸す・持ち続けるの、それぞれの手元に残るお金の目安を一緒に出します
- ✅ 税金・登記・相続人どうしの話し合いは、それぞれの専門家(税理士・司法書士・弁護士)の役割です。必要なときは、相談先の探し方もお伝えします
まずは整理だけ。ご依頼はそのあとで大丈夫です。返信は原則24時間以内、私(岡本)からお送りします。
実家のことで家族が決めておくことは?
国土交通省の調査(令和6年)では、相続で空き家を取得した世帯の約77%が、相続前に特に対策を講じていませんでした。対策の中で最も多かったのは「被相続人との話し合い」で、約17%です。話し合いは、今日からでも始められる備えです。
まずご家族で話しておきたいのは、次の5つです。分かったところから書き足していけば十分です。
| 決めておくこと | 話すこと・確かめること |
|---|---|
| 1. 親御さんの希望 | 住み続けたいか/施設に入るときに家をどうしてほしいか/残したいもの |
| 2. 名義と書類 | 登記簿の名義/権利証(登記識別情報)や固定資産税の通知書の置き場所 |
| 3. お金 | 施設や介護の費用を預貯金でまかなえそうか/家のお金を充てる必要がありそうか/住宅ローンが残っていないか |
| 4. 役割 | 誰が手続きの窓口になるか/きょうだいでの分担/備えを使うかどうか |
| 5. 家の値段の目安 | 売れそうか/売ったら手元にいくら残りそうか/貸せそうか |
私が特に大切だと考えているのは、1番と5番です。親御さんの希望が分かれば、ご家族が判断に迷ったときの軸になります。また、家の値段の目安が分かれば、「売る」「貸す」「持ち続ける」を同じ物差しで比べられます。
たとえば、お母様がお一人で住んでいて、離れて暮らすきょうだいがふたりいる場合を考えてみます。「元気なうちは住み続けたい。施設に入るときは、売って費用に充ててよい」と聞いておけば、そのときにきょうだいで迷わずに済みます。
売ると決めていなくても、値段の目安があると、話し合いが進めやすくなります。



「売るつもりがないのに、値段を調べてもいいのでしょうか?」



もちろん大丈夫です。目安を知ることと、売ると決めることは別のことです。
ここがポイント
- 親御さんの希望を、最初に聞く
- 名義・書類・お金・役割を、1枚のメモにまとめる
- 売ると決めていなくても、家の値段の目安を知っておく
親にどう切り出せばいい?
親御さんにとって、実家は長く暮らしてきた大切な場所です。いきなり売る話をされると、寂しく感じられるかもしれません。ですから私は、家の話より先に、暮らしの希望を聞くことをおすすめしています。
たとえば、次のような言葉から始めてみてください。
- 「これから先、どんなふうに暮らしていきたいか聞かせてほしい」
- 「もしものときに、お父さんの希望どおりにしたいから、教えておいてほしい」
- 「大事な書類の置き場所だけ、一緒に確かめておきたい」
反対に、次のような進め方は避けたいところです。
- 最初から「家を売ろう」と切り出す
- きょうだいのうち一人だけで話を進める
- 一度の話し合いで全部を決めようとする
決めるのは親御さんご本人です。ご家族の役割は、希望を聞いて書き留めておくことだと私は考えています。聞いた内容はメモにして、きょうだいとも共有しておくと、あとで食い違いが起きにくくなります。



一度で決めなくて大丈夫です。少しずつ聞いていきましょう。
ここがポイント
- 家の話より先に、暮らしの希望を聞く
- きょうだいとも共有し、一度で決めようとしない
- 決めるのは親御さんご本人
まとめ
- 売主は親御さん本人 — 実家が親御さんの名義なら、ご家族だというだけでは代わりに売ることはできません
- あとからだと家庭裁判所が関わる — 成年後見人等が居住用の実家を売るには、家庭裁判所の許可が要ります
- 改正法が成立した — 2026年6月に成立しました。施行までは今の制度が使われます
- 備えはお元気なうちに — 本人が売る・任意後見・信託の3つに分けて考えます
- 5つをメモに — 希望・名義と書類・お金・役割・家の値段の目安を書き留めます



「まずは、これからの暮らしの希望を聞くところから始めてみます。」
まずは、親御さんにこれからの暮らしの希望を聞き、実家の名義を登記簿で確かめるところから始めてみてください。
相続した実家は、片付け・登記・兄弟との話し合い・売るか持つかの判断が重なって、なかなか動き出せないものです。LINEで「実家」とひとこと送っていただければ、相続した家の段取りチェックリスト(期限と相談先をまとめた1枚)をお送りします。
- ✅ 今やること/まだやらなくていいことを、状況に合わせて整理します
- ✅ 売る・貸す・持ち続けるの、それぞれの手元に残るお金の目安を一緒に出します
- ✅ 税金・登記・相続人どうしの話し合いは、それぞれの専門家(税理士・司法書士・弁護士)の役割です。必要なときは、相談先の探し方もお伝えします
まずは整理だけ。ご依頼はそのあとで大丈夫です。返信は原則24時間以内、私(岡本)からお送りします。
【参考情報】
| 情報 | 出典 |
|---|---|
| 法務省 民法等の一部を改正する法律(成年後見及び遺言の制度の見直し)について | https://www.moj.go.jp/MINJI/minji07_00410.html |
| 法務省 民法等の一部を改正する法律の概要資料 | https://www.moj.go.jp/content/001465481.pdf |
| 法務省 成年後見制度 Q&A(Q2 法定後見と任意後見の違い) | https://www.moj.go.jp/MINJI/a01.html |
| 法務省 成年後見制度 Q&A(Q10 成年後見人等に選ばれる人) | https://www.moj.go.jp/MINJI/a02.html |
| 法務省 成年後見制度 Q&A(Q16〜19 任意後見) | https://www.moj.go.jp/MINJI/a03.html |
| 法務省 成年後見制度 Q&A(Q22・Q23・Q25 費用・期間・利用の終了) | https://www.moj.go.jp/MINJI/a04.html |
| 裁判所 成年被後見人(被保佐人、被補助人)の居住用不動産の処分についての許可 | https://www.courts.go.jp/saiban/syurui/syurui_kazi/kazi_25_04/index.html |
| e-Gov法令検索 民法 | https://laws.e-gov.go.jp/law/129AC0000000089 |
| 最高裁判所 成年後見関係事件の概況(令和7年) | https://www.courts.go.jp/assets/20260316koukengaikyou-r7.pdf |
| 国土交通省 令和6年空き家所有者実態調査 | https://www.mlit.go.jp/report/press/content/001907491.pdf |
| 長野家庭裁判所 成年後見人等の報酬額について | https://www.courts.go.jp/nagano/vc-files/nagano/file/20190401-12koukennnihousyuu.pdf |
| 厚生労働省 認知症および軽度認知障害の高齢者数と有病率の将来推計 | https://www.mhlw.go.jp/content/001279920.pdf |
※本記事は情報提供を目的としたものであり、特定の不動産取引や制度の利用を推奨するものではありません。記載情報は執筆時点(2026年11月)のものです。制度の選び方や個別の手続きは、公証役場・家庭裁判所・専門家にご確認ください。










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